メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~


そろそろかな、と灯里は時計を確認した。
日曜日の午前十一時。この二ヶ月ほど、必ずこの時間に客が来る。

思った通りインターフォンが鳴った。

ほら来た!
ヤマダさんって本当に時間に正確だよねー。

灯里は感心しながら、玄関に走った。

ガチャリと扉を開けると、渋い顔のヤマダが立っている。

「ちゃんと誰が来たか確認してから開けてって言いましたよね」

「だって、ヤマダさんだってわかってるもの」

首をすくめて言うと、それでもダメですとお叱りを受けた。

ヤマダは一度だけ今西と来たが、それ以降は一人で来るようになった。
初めて来たときに出した夕食をとても気に入ってくれたので、「こんな田舎料理でよければ、また食べに来て下さいね」と言ったら、毎週日曜日に来るようになったのだ。

豆腐の田楽、山菜の天ぷら、けんちん汁、灯里が作るものは祖母仕込みの素朴な料理ばかり。でも、ヤマダはどれも美味しいと言って食べてくれる。

男の人に料理を作ったことなどなかったが、旺盛な食欲で平らげてくれるのは達成感があり、嬉しいものなのだと灯里は初めて知った。

それに、家の中に男の人がいるだけで安心することも知ってしまった。

灯里は四国で雹を経験してから、悪天候が苦手になった。雨ぐらいなら少し憂うつになるぐらいだが、雷が本当にダメだ。一度日曜日に雷雨があり、ヤマダを涙目で出迎えたことがあった。灯里が事情を説明すると、ヤマダは切なそうな顔をして「それは怖い経験をしましたね」と頭を撫でてくれた。

「もう大丈夫」と言われた時に感じた頼もしさ。
一人暮らしに抵抗を感じたことはなかったが、家の中に自分以外の人がいるのはやっぱりいいなと思ったのだ。

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