メール婚~拝啓旦那様 私は今日も元気です~
『灯里ちゃん?悠太郎と遊んでくれてたのよね、ありがとう。ちょっと言っておかなければならないことがあって電話したの。今朝、晴夏に灯里ちゃんは貴船で預かってると教えたの。多分凄まじい剣幕で行くと思うから、覚悟しといて』
『えっ!?晴夏さんに?』
『灯里ちゃんをさらって半年が過ぎたし、おじいちゃんがそろそろお灸も効いただろうって言うから、晴夏に連絡したのよ。そしたら、なんで黙ってたんだってすごく怒っちゃって。飛んでくるわよ、あの子』
電話の向こうで葵がケラケラと笑った。
『誰にも言っちゃダメよって言っておいたけど、俊樹君はすぐに気づくと思うの。陽大に伝わるのは時間の問題だから、きっと陽大も来るわ。今日は賑やかな一日になると思うから頑張って。そうそう、陽大は離婚届出してないからよろしくねー』
軽やかに言って電話は切れた。
灯里はスマホを耳に当てたまま呆然とする。葵は何でもないことのように言ったが、灯里にとっては一大事だ。
もちろん、晴夏と会えるのは嬉しい。でも、安西も来るかもしれないなんて。
離婚届を出していないなんて、考えてもみなかった。あの婚約者の人とはどうなっているのだろう。
時間を確認したら、十一時だ。おそらく晴夏は午後の早い時間に来る。どうしようとオロオロした。
「どうしました?大丈夫ですか?」
心配して静子が声をかけてくれる。
「あの、晴夏さんが今から来られるそうです」
「あら!陽子様もご一緒ですか?」
「いえ、お義母様はご一緒じゃないと思います。でも陽大さんは来られるかも…」
「んまあ!大急ぎでお部屋の用意をしないと」
静子は和泉家の人たちをもてなすことに命を懸けている。悠太郎をホイと灯里に渡して、大慌てで支度をしに行った。