離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです

「ど、どちらさまですか?」
「彼女の夫、柳澤真紘の同僚です」

 ふたりのうち体格のよい方、雨郡さんが堂々と言った。胸を張った姿は海外の要人を守るSPのようだ。

「柳澤に言われてたんですよ。自分が不在の間、妻の身を守るのに協力してほしいと。過保護にもほどがあると思ったが、まさか出発してすぐに手を出そうとする不届きなヤツがいるとは」

 挑発するような物言いが似合いすぎるクールなイケメンは、司波さん。

 まさか、真紘さんが彼らにそんなお願いをしていたなんて……。

 真紘さんの愛情が嬉しいとともに、その約束を律儀に守る彼らの絆にも感動した。真紘さんが海外に行ってしまって寂しいのは、私だけじゃない。真紘さんは、全然孤独なんかじゃない。

「参りました。……きみの夫は相当な策士なんだな。俺の接近を見越しているなんて」

 肩を落とし、ため息交じりにそう言ったのは、専務だ。

 そう、真紘さんはとっても頭がよくて策略家。私の前でだけは、寂しがりで甘えん坊な一面もあるけれど。

 惚気るようにそう思いつつも、善意でここへ来てくれた専務にはなんだか申し訳ない。


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