離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
甘い言葉でどきりとさせられたのは一瞬で、真紘さんは意地悪な顔をして私の黒歴史を引っ張り出した。
ユーモラスなシーンを切り取ったその像は私も面白いなと思ったけれど、まさか自分と重ねて見られていたとは。
「もう、その話は忘れてください……!」
「やだ。ことあるごとにこうして佳乃を苛めて楽しむ」
拗ねてむくれながらも、やっぱり真紘さんと過ごす時間は楽しくて、あっという間に過ぎてしまう。
時が止まればいいのにとこんなに本気で祈ったのは初めてだった。
帰国する前日は、エーゲ海の真珠と謳われるミコノス島に滞在した。
紺碧の海に、白い街並み。丘の上にはかわいらしい風車が並び、散歩しているだけで気持ちがいい。
明るいうちはショップで会社や家族のためのお土産を選んだり、カフェで休憩したり。
美しい島の景観が徐々にオレンジ色に染まってくると、高台に上って、水平線に沈む夕日をふたりでただ眺めた。
真紘さんに肩を抱かれて寄り添い、間近に迫った別れに切なく軋む心を、そっとあたためる。