離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
「佳乃。俺が羽田で別れ際に言ったフレーズ、覚えてる?」
不意に真紘さんが尋ねてきて、少し考える。そういえば、最後の最後に意味不明な外国語を残し、真紘さんは出発した。私もずっと気になっていたんだ。
「なにか言ってくれたのは覚えてます。でも、詳しい言葉までは……耳慣れない言葉だったのでちんぷんかんぷんで」
真紘さんはクスッと笑った後、私をまっすぐに見下ろした。夕日に照らされた髪が風に揺れ、きらきらと光を放つ。
「常にあなたのことを考えています――。ギリシャ語でそう言ったんだ。これまでもそうだったし、明日佳乃が帰った後も、俺はずっと佳乃を想ってる。だから、もう少しだけ待っててほしい。離れても、愛してる」
「……はい」
絞り出すように返事をしたけれど、涙がこみ上げてそれ以上なにも言えなくなった。
私はやっぱり、真紘さんが好きだ。こんな時に痛いほど思い知らされるなんて……。
小さく肩を震わせる私を、真紘さんが抱き寄せる。そして、徐々に宵闇が近づき美しいグラデーションに染まった空の下、私たちは人目も憚らず口づけを交わした。