離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
「おい、まさか司波、俺のいない間に佳乃を孕ませて……」
「対面して第一声がそれかよ。んなわけあるか」
ふたりが冗談を言い合うのが終わると、真紘さんの視線が改めて私の方へ向く。
「ってことは、佳乃……」
「今、八カ月なんです。ギリシャに行った時、できたみたいで」
あの後、真紘さんはとても忙しくなった。立てこもりなんて事件が起きてしまったせいで、大使館の防犯や警備体制について連日会議が持たれたり、銃の所持についてもっと規制を厳しくすべきだとギリシャ政府に意見書を提出したり。
電話やメッセージの頻度も減ってしまい、ビデオ通話で話した際には、めったに見せない疲労が漂っているのが見て取れた。
妊娠を伝えたら喜んでくれるのはわかっていたけれど、同時に心配もかけてしまう。
だから、とくにトラブルなく赤ちゃんが育ってくれれば、帰ってきた時にサプライズで報告しようと決めていた。
「そっか、あの時の……」
真紘さんは静かに呟くと、突然スーツケースから手を放し、ガバッと私を抱きしめた。
「最高のサプライズプレゼントだ。ありがとう、佳乃」
真紘さんの双眸が、今までで一番キラキラ輝きながら私を映す。
その美しさに吸い込まれるかのように、自然と顔を近づけてキスの態勢に入っていたその時。