離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
「初めまして、佳乃の夫です。いつも妻がお世話になっております」
真紘さんが得意の人懐っこい笑みを浮かべ、握手を求めるようにスッと専務の前に手を差し出す。
最初はたじろいでいた専務だけれど、真紘さんの友好的な笑みにつられるように自分の手を重ね、ふたりは固く握手を交わした。
……ように見えたけれど。
「いっ……痛たたたっ!」
「聞いてますよ、あなたのよからぬお噂の数々。なんでも俺が日本を発ったその日に佳乃に近づこうとしたとか」
「す、すみません! もうしません!」
専務が悲鳴じみた声を上げると、真紘さんはパッと手を放す。
私の位置からではなにがあったのかハッキリ見えないのできょとんとしていると、真紘さんがくるりと振り返り、笑顔でこちらに戻ってくる。
少し離れた場所で一連のやり取りを傍観していた司波さんは、声を殺してくつくつと笑っていた。
「よし。帰ろっか、俺たちの家に」
「は、はい。皆さん、失礼します」
ぺこりと頭を下げると、真紘さんが私の手を取る。みんなの前で恥ずかしいなと思いつつも、しっかり指を絡めて手を繋ぎ、私たちは空港を後にした。