離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
「ひゃっ」
「このキスマーク、旦那様? もしかして、ようやく結ばれたの?」
雨音さんは嬉々として私の顔を覗き、私がこくりと頷くと「きゃ~」と興奮した。
そういえば朝、真紘さんが私の首の後ろを見て、スカーフを巻くならいいか、とかなんとか言っていた。まさか、キスマークをつけられていたなんて!
「んもう、よかったじゃない。詳しく聞きたいところだけど、そろそろ行かないとね。話はランチの時にしましょう」
「は、はい」
手早くスカーフを巻き、雨音さんと一緒に更衣室を出た。
受付の人員は、基本的に私と雨音さんのふたり。しかしもうひとり、私たちの仕事をフォローしてくれる大事な仲間がいる。
「おはよう、テンマくん」
私が声をかけたのは、受付カウンターの上に乗った、湯沸かしポットほどの大きさのロボット。テンマくんはウイィン、と音を立てながら顔を上げ、私たちの姿を確認する。
『オハヨウゴザイマス、アマネサン、ヨシノさん』
胸にタブレットを携え、大きな目にはカメラと3Dセンサーが搭載されている人工知能搭載ロボット、テンマくん。
英語なら使える私と中国語が得意な雨音さんでもカバーしきれない、二十カ国の言語で接客ができる優等生だ。