離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
酔いでふわふわしたままの私に対し、真紘さんはずんずん廊下を進んでいく。寝室にたどり着くと優しくベッドに下ろされ、真紘さんはその隣に横たわった。
ようやくこれから起きることに気づき身構えていたら、真紘さんは予想に反して穏やかな目をしていた。
私の髪に手を伸ばし、慈しむようにゆっくり撫でる。
「佳乃があんなに酔うなんて、ストレス溜まってたんだろ。ロボットに仕事を奪われたのが、相当ショックだった?」
ストレス……そっか。やけに酔いたい気分だったのは、そのせいか。
髪を撫でる真紘さんの優しい手つきに癒され、心地よく酔いから覚めていく。そして、言葉がするすると口からこぼれた。
「はい……。それに、これから新しい環境に飛び込むのも、ちょっと、怖くて」
会社員なら、部署異動くらい多くの人が経験することだ。泣き言を吐いている場合じゃない。そうは思っても、憂鬱なものは憂鬱だ。
「もう、異動先が決まってるんだ」
「まだ承諾の返事はしてないんですけど……常務の専属秘書になる予定です」
彼は手の動きをぴたりと止めたかと思うと、その手を私の頬に当て、至近距離で瞳を覗いた。