離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです

「赤ちゃんか……」

 誰にも聞こえないように呟き、真紘さんとの間に子どもを授かるのを想像する。

 真紘さんに似た赤ちゃんなら、男の子でも女の子でもかわいいだろうな。彼は仕事が忙しいけれど、基本的に育児にも協力的だろうから、そこまで不安もない。

 いいな……私、もしかしたら赤ちゃん欲しいのかもしれない。

 司波家のあたたかい雰囲気に憧れるとともに、大麒くんを見て単純に母性本能が刺激され、いつか真紘さんとの間に赤ちゃんを授かりたいと、漠然とだが夢見た。


「ご馳走様でした。とっても美味しいから食べ過ぎちゃいました」
「ありがとう、佳乃ちゃんにそう言ってもらえてうれしい」

 食事が済むと、花純さんが淹れてくれたコーヒーでひと息つく。話しているうちに年上の花純さんは敬語が抜け、私を『佳乃ちゃん』と呼んでくれるようになった。

 男性陣ふたりはリビングに移動して、大麒くんの様子を見ながら仕事の話をしている。

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