離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです

「どうした大麒(だいき)、おむつか?」

 すぐさま反応した司波さんは、私たちにスリッパを勧めてから、早足でドアの方へと向かう。その姿を見た真紘さんは、おかしそうに肩を揺らした。

「あの司波がまじめにパパやってる」
「素敵じゃないですか。奥様のこともお子さんのことも大事にしてるんですよ」

 話しながらリビングダイニングに移動すると、奥様の花純さんがキッチンで料理の盛りつけをしていた。

「大麒がまだ小さいので料理研究家は休業中なんですが、育児が落ち着いたら復帰したいと思ってるんですよ」

 話しながら完成した料理をテーブルに並べていく花純さんは、テレビや雑誌で見るイメージ通り、まさに理想の奥様。

 料理も、春らしい鮮やかな色合いのちらし寿司、煮物、だし巻き卵、旬野菜の天ぷらなど、手の込んだ和食で統一されている。

「あっ、こら、じっとしろ!」

 リビングの窓際に置かれたベビーベッドでは、司波さんがおむつ交換に奮闘中。大麒くんがすぐ足をバタバタさせてしまうので時々慌てた声が聞こえるが、花純さんはその姿をおおらかな笑顔で見守っている。

 本当に幸せそうなご家族で、こちらまで心が和む。

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