マリアの心臓
楽しい雰囲気は、一切ない。
以前のときとは、確実にちがう。
告白? 劇?
そんな生やさしいものじゃなかった。
彼女たちは、本気だ。
「あ、アタシ……あなたがたに何かしてしまいましたか……?」
「は? それ本気で言ってんの?」
「無差別殺人と同類よ?」
「それとも、やりすぎて覚えてない?」
ごめんなさい。
と、反射的に謝りそうになり、とっさに下唇を噛んだ。
だめだ。まだ、言っちゃだめ。
何もわかっていないのに謝るのは、相手のためじゃない。
自分が楽になりたいからだ。
こんな身勝手、許されない。
優木まりあのためにも。
「……っ」
「へえ、ここで黙るんだ? 否定しないってこと?」
「ち、ちが……!」
「さすが、うわさの悪女」
良かれとしたことが、どんどん悪い方向にいってしまう。
「覚えてないなら教えてあげる、あなたの罪」
「他人の告白じゃましたり、ファンクラブに脅迫状送り付けたり。神亀の偽情報を流したり、ストーカーまがいなことしたり……」
指摘されてやっと、なんとなくだけれど記憶がよぎる。
どれも、優木まりあ自身、似たようなことをしでかした覚えがあった。
エイちゃんへの強すぎる愛。
明日には会えなくなるかもしれない、そんな途方もない不安。
さらに好きなヒトから拒絶されてしまえば、それらが暴走してしまうのも無理はない。
子どものいたずらとも言える範囲ではある。
けど、それで傷ついたヒトがいるなら、見て見ぬふりしちゃいけない。
……でもね?
そんな彼女を、アタシは……アタシだけは、責められないよ。
わかち合えてしまうんだ。
その焦りは。
孤独は。
……願いは。
真っ白な部屋に閉じ込められたヒトにしか、わかり得ない。
「昨日なんてさ! 衛さまだけにとどまらず、羽乃くんに抱きついたり、鈴夏センパイに媚ったりもしてたよね?」
昨日? 昨日ならアタシの話だ。
抱きつく……? 媚びる……?
いったい何のこと?