マリアの心臓
脱力してよろめいたアタシを、彼はちゃんと支えてくれた。
「ど、どうして鈴夏センパイがここに……!?」
「わたしが呼んだの」
さらにもうひとり、校舎の陰から姿を現した。
くるりんとカールしたポニーテールがそよぐ。
アタシのお姫さま!
……じゃなくて、ファンクラブ会長!
「か、会長!?」
「どうしてふたりが……!?」
「指導しに来たのよ」
「し、指導……?」
動転していた女の子3人は、「指導」の意味を悟ると、またえらそうにふんぞり返る。
「会長もこいつに言い聞かせに来たんですね!」
「会長の悪女嫌いは有名ですもんね!」
「鈴夏センパイまで連れてくるあたり、会長本気すぎ~! キャハハッ! かっわいそ~!」
鼓膜が張り裂けてしまいそう。
無意識にうつむき、耳を塞ぎかける。
「失望したわ」
「あーあ、会長もお怒りに」
「あなたたちに」
「……へ?」
耳の表面に触れた指を、止めた。
止められた。
お姫さま、もとい会長に、やさしく握りしめられて。
「か、会長……? ど、どうして悪女側について……」
「あなたたち、やりすぎよ」
「え……で、でも、こいつが……!」
「いくら不良を推してるからって、あなたたちのやっていることが正当化されるわけじゃないのよ」