LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
「これ、婚姻届。
俺の名前と、証人の欄はもう書いてるから」
目の前のテーブルに広げられた、その茶色の縁で囲まれた、薄い紙。
それには、本人が言ったように眞山社長の名前が書き込まれていて。
そして、証人の欄には、眞山社長のお父さんの名前だけじゃなく、
私の母親の名前も書き込まれている…。
これを書いたのは、いつ?
何故、母親は私に何も言わないの?
私が、晴君の所に居た週末に書いたのだろうか?
そもそも、最近は一緒に暮らしているけど、
母親とは殆ど家で顔を合わせないし、
会っても殆ど話す事はなかった。
「早く書いて?
俺、すぐに出ないといけないから」
そう言って眞山社長は、高級感のあるボールペンをその婚姻届の上に置く。
「あの…私…彼氏居るんです…」
そうじゃなくても、よく知らないこの人と結婚なんて出来ない。
「知ってる。
レディトイプロジェクト部の、篠宮晴。
彼、けっこう大胆に君に告白したんでしょ?
だから、社内では有名だよ」
そうなのかもしれないけど。
それを、私達からしたら雲の上に居るような、社長であるこの人迄知ってるなんて。
「篠宮君、何か理由付けてクビにしてもいいけど」
それは、脅しなのだろう。
私がこの結婚を受け入れなければ、晴君をクビにすると。
実際、労働基準法があるから、社長でもそんな横暴な事は出来ないかもしれないけど。
ただ、今とは違う、部署に飛ばしたりは出来るかもしれない。
晴君は二人の時、私によく仕事の話をしてくれる。
自分の企画が通った事とかを、嬉しそうに。