LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
私が社長室に居た時間が短かったからか。
変に思われ、受付に戻った私に神山さんから何があったのか、とか訊かれる事はなく。
弁護士の滝沢さんの奥さんの事を神山さんに訊いてみようとかも、すっかりと頭から抜け落ちた。
ただ、その後ずっと頭にあったのは、眞山社長の憎しみの籠った私に向ける目と。
今日、彼氏である篠宮晴と別れないといけないという事。
「ごめん!遅くなって」
そう言って、晴君は私が待つ喫茶店へと現れた。
この喫茶店は、ベリトイのビルから歩いて10分程の所。
「ごめんね。無理言って」
「ううん。休憩がてら抜けて来たから。
そこまで慌てて戻らなくてもいいから、夕飯一緒に食べない?ここパスタが美味しいから」
定時で上がれる私とは違い、晴君は毎日のように残業をしていて。
今も私の就業後、こうやってまだ仕事中の晴君を、呼び出した。
「食事は、いいかな」
「そっか。なら俺もいいや。
で、話したい事って何?」
そう向けて来る顔は、私から別れを言われるなんて微塵も思っていない。
「別れて欲しいの」
そう言うと、晴君は一瞬、え、と驚いた後。
焦ったように、眉が下がっている。
「別れたいって、なんで?」
「私、晴君以外の人と結婚する事になって」
もしかしたら、もうあの婚姻届は提出されていて。
もう私は、結婚しているのかもしれないけど。