LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
奥村さんに連れられ、社長室へと行くと。
「千花」
そう、眞山社長は私の顔を見て笑顔を浮かべている。
これ程、誰かの笑顔が怖いと思うのは、この人以外に経験した事はない。
この人にちゃんと会うのは、あのホテル以来。
昨日も今日も、エントランスを通り抜ける姿をチラリとは見たけど。
受付に居る私と神山さんに、眞山社長は会釈を返して来たくらい。
「けっこう頼み過ぎたから、美帆子もどう?」
「いえ。私はけっこうです。
せっかくなので、お二人で」
それは、眞山社長と奥村さんの会話なのだけど、
そうやって、美帆子と名前で呼んでいるんだ。
キッチリとした仕事場では、そうではないだろうけど。
やはり、今は友人でも、元恋人同士。
失礼します、と、奥村さんは社長室から出て行った。
「千花、早く座って。
冷めてしまうから」
眞山社長に促され、彼の座るソファーの向かいに腰を下ろした。
「中華なんですね?」
なんだが、少し意外。
「昼はけっこう重いものが食べたくて。
あ、ここの餃子はニンニク使ってないから。
この後も仕事だし、そういうの気になるだろ?」
そう言われ、テーブルの上の餃子を見た。
テーブルの上には餃子だけではなく、
エビマヨ、スブタ、焼き飯、春巻き等が、個別にテイクアウト用の箱に入っている。
そのどれも、ちょっと高級なのだろうな、って雰囲気がある。
「朝から餃子が食べたくて、中島に買って来て貰ったんだよ」
確か、その中島さんも眞山社長の秘書の一人。
ただ、中島さんは男性だけど。
「うちの母親、殆ど和食しか作らないから。
その反動だろうな」
誰が言っていたかは忘れたけど、
眞山社長は実家暮らしらしい。
それで、母親の手料理を頻繁に食べているのだろう。