LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
役員室のあるフロアは、廊下に重厚感のあるカーペットも敷かれていて。
毎度このフロアに訪れるのは、緊張する。
と言っても、まだ二度目だけど。
エレベーターを降りてすぐの所で、
奥村さんが私達の事を待っていた。
「滝沢様、お待ちしておりました。
眞山の部屋はあちらです」
「はい。存じてます」
奥村さんと滝沢さんの会話の感じ。
二人は何度か面識は有るみたい。
「では、私はこれで失礼します」
「いえ。眞山は、辻山さんにも同席して欲しいと、申してまして」
「私も…ですか?」
「ええ」
何故?と訊きたいけど、それ以上何かを言う隙を与えず、奥村さんは滝沢さんに話しかけた。
「今日の眞山とM社との会談が一時間早まりまして、出来れば早く話を打ち切って頂ければ」
「了解しました。
では、辻山さん行きましょう」
そう言って、滝沢さんは私を促す。
なんだか胸騒ぎがして、足が重い。
眞山社長が、私に一体何の用なのだろうか…。
社長室の前、奥村さんが扉をノックすると、
すぐに眞山社長の返事が返って来た。
「滝沢様と辻山さんをお連れしました」
扉を開けた奥村さんはそう言うと、私達を社長室へと促し、
失礼します、と部屋の中には入って来なかった。
広々とした社長室。
執務机もあるけど、眞山社長が今座っているのは、応接セットのソファー。
「滝沢君、久しぶり。
急にごめんね。
滝沢君にしか頼めない事で」
「本当に、眞山社長からの依頼は、面倒事ばかり」
そう、滝沢さんは苦笑していて。
その依頼は、私にも関係ある事なのだろうか?