LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~

「それより、滝沢君も辻山さんもソファーに座って。
俺、すぐに出ないといけないから、お茶とかは出ないけど」


そう言えば、この後の眞山社長とM社との会談が一時間早まったと、先程奥村さんが言っていたな。


滝沢さんがそのソファーの方へと行くので、私もそれに付いて行くように歩く。


滝沢さんは眞山社長の向かいに座り、
この場合どちらに座ればいいのか迷うけど、なんとなく滝沢さんの横に腰を下ろした。


正面に居る眞山社長は、私と滝沢さんをニコニコと見ている。


その笑顔が、怖いと思ってしまう。



「辻山さんと俺は、初対面ではないのだけど。
さすがに、覚えてないか?」


眞山社長に訊かれ、いえ、と口を開く。



「ぼんやりとですが、覚えてます。
えっと、NANTENスクエア主催のパーティーで」


「そうそう。うちの出したゲームが大ヒットして、そのお祝いのパーティーで。
Yホテルだったかな?確か」


そう言うパーティーだったのか、と思う。


そのパーティーでの私は、まだ5歳くらいだったはず。


だから、あまり覚えてない。



「あの時、辻山さんの通っている保育園が、流行り病で一時閉園になってて。
で、辻山さんのお母さんが、仕方なく連れて来たと言っていたな」


ああ、そうなんだ、と思う。


そう言った場に私が行ったのは、後にも先にもその一度きり。


「辻山さんのお母さんは、優秀な秘書だとうちの父親が言っていたよ」


笑いながら言われたその言葉に、体が震えた。


だって、この人目が笑っていない。



私の母親は、眞山社長のお父さんの秘書を、
私が幼い頃からしている。


今も、そう。


「本当に、君のお母さんには、うちの父親はお世話になっているみたいだからね」



「…」



何か、言った方がいいのだろうか?


この人は、知っているのだろう。


私の母親と、彼の父親との関係を。


それは、世間でいう、不倫。

< 9 / 148 >

この作品をシェア

pagetop