LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
「それより、滝沢君も辻山さんもソファーに座って。
俺、すぐに出ないといけないから、お茶とかは出ないけど」
そう言えば、この後の眞山社長とM社との会談が一時間早まったと、先程奥村さんが言っていたな。
滝沢さんがそのソファーの方へと行くので、私もそれに付いて行くように歩く。
滝沢さんは眞山社長の向かいに座り、
この場合どちらに座ればいいのか迷うけど、なんとなく滝沢さんの横に腰を下ろした。
正面に居る眞山社長は、私と滝沢さんをニコニコと見ている。
その笑顔が、怖いと思ってしまう。
「辻山さんと俺は、初対面ではないのだけど。
さすがに、覚えてないか?」
眞山社長に訊かれ、いえ、と口を開く。
「ぼんやりとですが、覚えてます。
えっと、NANTENスクエア主催のパーティーで」
「そうそう。うちの出したゲームが大ヒットして、そのお祝いのパーティーで。
Yホテルだったかな?確か」
そう言うパーティーだったのか、と思う。
そのパーティーでの私は、まだ5歳くらいだったはず。
だから、あまり覚えてない。
「あの時、辻山さんの通っている保育園が、流行り病で一時閉園になってて。
で、辻山さんのお母さんが、仕方なく連れて来たと言っていたな」
ああ、そうなんだ、と思う。
そう言った場に私が行ったのは、後にも先にもその一度きり。
「辻山さんのお母さんは、優秀な秘書だとうちの父親が言っていたよ」
笑いながら言われたその言葉に、体が震えた。
だって、この人目が笑っていない。
私の母親は、眞山社長のお父さんの秘書を、
私が幼い頃からしている。
今も、そう。
「本当に、君のお母さんには、うちの父親はお世話になっているみたいだからね」
「…」
何か、言った方がいいのだろうか?
この人は、知っているのだろう。
私の母親と、彼の父親との関係を。
それは、世間でいう、不倫。