私の愛は···幻

🎹突然


健人さんが帰らなくなって
ひと月を過ぎた頃に
ピアノ教室に女性が訪ねてきた。

「天音先生、受付にお客様が
お見えになってますが。」
「お客様?お名前は?」
「そえじま様と言われました。」
「そえじま様?ちょっとわからないけど
ありがとう。行ってみるね。」
と、言い受付に行くと
綺麗な女性がいた。
その方に
「堂基です。」
と、言うと
「あなたが、健人の?」
「健人さんのお知り合いの方ですか?」
「少し、お話ししたいの。
時間大丈夫かしら。」
と、言われて
時間割をみると
今日は、この後なかったので
受付のエミちゃんに伝えて、
そえじまさんと出る。

「ごめんなさいね。
   急に、伺って。」
と、言われたが
少しも悪いと思っているようには
見えないが·······
「いいえ。」
と、言うと
「ここは、どう?」
と、カフェをさされて
そちらに入る。

天気も良いので
外のテラス席に座り
注文をする。

彼女は、コーヒー
私は、紅茶が手元にきて
一口飲むと彼女から
「私と健人は、大学時代に
付き合っていたの。
私の父が、ソエジマリゾートを
経営していて、私は一人娘だから
後継者になるために海外へ
留学するためにお別れしたの。
でも、嫌いで別れたわけではないの。

それに堂基のおじ様は、
貴女を認めてないでしょ?
健人の嫁は、私だと決めていたから。
それに、今は毎日
健人と一緒にいるの。
ソエジマと堂基の共同企画で。」
と、言われて
「お義父様には、
認めて貰えてないかもしれませんが
私と健人さんは、結婚しています。
健人さんからは仕事だと聞いています。」
と、言うと。 
顔を赤くして
「ふん。まぁ、いいわ。 
そのうち、わかるから。」
と、言って彼女は
もう一口、コーヒーを飲むと
レシートを持って立ち上がり
出て行った。

あの匂い······だった。

彼女には、あんなふうに
言ったが·····

お義父様の事といい
本当に仕事なのかも

本当は、彼女といるだけかも
私には、何もわからなかった。
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