私の愛は···幻

🎹健人Side


いまでは、家に帰る事も
出来ていない。

帰ろうとすると
父親や花奈から
呼び止められ
相談や仕事の話をされていた。

ソエジマリゾートを
終わらせる事が決まり
負債の支払いや
従業員の受け入れ先をお願いしたり
関連企業への説明対応に
毎日追われる始末

毎日バタバタしていて
自分の携帯がどこにあるのかさえも
わからずにいた。

まあ、天音の声を聞けば
帰りたくなるし
どこかにあれば良い
そんな風に簡単に考えていた。

ソエジマリゾートを
終わらせると決まった日
父から副島のおじさんの労を
労いたいと言われて
四人で食事をした。

副島のおじさんが
涙を流すのを見て
花奈も責任を感じていた。

食事が終わると
父とおじさんは、
別の所へと移動し、
俺と花奈は
ラウンジで飲むことにした。

花奈は、飲みながら
泣いていて
帰るのは無理となり
ホテルの部屋を取った。

部屋の前で
泣き続ける花奈を
抱きしめて
花菜も頑張った。
と、声をかけると
花奈にいきなりキスをされて
ここの所、会っていない天音を
思い出している間に
部屋に引っ張られて
何度もキスをされながら
「一緒にいて。
   帰らないで。」
と、泣きながら言う花奈を
思わず抱いてしまった。

朝、目が覚めると
花奈は、起きていて
「愛してるの。」
と、言って抱きついてきた。

裸のままの二人だが
俺は、花奈の身体を離して
「昨日は、すまない。」
と、謝りガウンを羽織
シャワーを浴びてから
会社へと向かった。

花奈がどんな顔をしていたか
見ることもなかった。

無論、昨夜の俺達を
天音が見ていた事も
知らなかった。

とにかく、花奈と
早く離れないといけない
と、思い。
やれる事を早急に片付けていった。

全てが片付いた時には
あの父親の電話から
三ヶ月以上が過ぎていた。

明日から通常な生活に戻れると
なった日に副島のおじさんが
「泰人、そして健人君
本当にありがとう。
本当にすまなかった。」
と、頭を下げる。

父親は、そんなおじさんの肩を
叩きながら一緒に飯でもとなり
また四人で食事へと向かった。

花菜に会いたくはなかったが
仕方ない。
おじさんから
「最後にお礼をさせてくれ」
と、言われては·····

場所は、
シャングリ・ラホテルだったが
天音がいることはないから
思っていた。

四人で美味しい料理を食べ
俺自身もこれで終わったと
ホッとしていた。

先に出た父とおじさん。
「健人、本当にありがとう。」
と、エレベーターまで見送る
花奈に言われて
「花奈も頑張れ。」
と、抱きしめた所に
エレベーターが開き
降りてきた人に目が開く
「····あま····ね··」
花奈の身体から腕を離し
天音の腕を取るが
天音は、首を振りながら
俺の手を剥がし
ラウンジへと入っていった。

天音の·····顔は······

追って行こうとする俺に
「健人、叔父様が帰るから
下に来なさい。と言われてるけど。」
と、携帯を振りながら花奈に言われて
天音は、ラウンジ入ったから
ピアノか?それなら大丈夫だろう
と、思い
「ああ。」
と、下へ降りて
父と合流し
副島のおじさんと花奈を見送り、
父が今後の話があると言うので
父を家へと送り
慌ててマンションへと帰るが
天音の姿はなかった。

携帯も鳴らすが
天音の声を聞く事も
折り返しかかる事もなかった。

今までの疲れからか
マンションへ戻った安堵からか
俺はソファーに座ったまま
眠っていた。

朝を迎えたが
天音は、帰ってなくて
自分の事は、棚に上げて
連絡のない天音にイライラしながら
何度も携帯を鳴らしながら
シャワーを浴びて
着替えをしてから会社へと向かう。

その間もずっと、天音の携帯に
ラインやメールをするが
折り返しもなかった。

健人は、この時、まだ
簡単に考えていた。

昨夜の花奈との事を見て
怒っているだけ
拗ねているだけ·····だと。
< 15 / 65 >

この作品をシェア

pagetop