私の愛は···幻
7️⃣

🎹心配


結婚してからも
おばあさまの誕生日や
おばあさまの行事事はともかく
ひと月に幾度かは必ず電話と手紙を
送っていた。

だが、このひと月、ふた月は
電話をかける事も
手紙を出す事も出来ていなかった。

電話でおばあさまの声をきけば
泣いてしまいそうだったから
手紙も何を書いて良いのか
わからなくなっていた。

そんな私を
ひと月は様子を見ていた
おばあさまだが
“ おかしい ”と
と、調べさせて今に至る。

おばあさまは、全てを知っている。

幸せになれない孫を
哀れに思われただろうか
目元から涙が······ツーと流れる。

それを温斗は
親指でそっと拭いてくれて
「心配されてる。とてもな。
おばあさま自身が日本へと出向くと
言われて、寺田さんが慌てていた。」
と、言われて
温斗の顔を見ると
「だから、俺が来た。
お前は、あれからおばあさまか
俺しかだめだろ?だから。」
と、言う温斗に
何度も頷き
「······ごめん·····ね。温斗·····
  忙しい······のに·····」
と、言うと
「俺の仕事は、どこでもできる。
PCさえあれば。
それに優秀な社員もいる。」

そう······

私が、何も考えずに
甘えられるのは、
おばあさまと温斗だけ。
両親の事故の時からだ。

ああ、もう一人いるが
今は、もう会うことはない。

大好きな両親と
とても私を可愛がってくれた
温斗の両親を一度に失い
私は失意のどん底にいた。

そんな私を
立ち直らせてくれたのが
おばあさまと寺田さん夫妻と温斗だ。
温斗だって
辛くて悲しいはずなのに。

あんなに大好きだったピアノさえ
弾けない······
さわれない······
触りたくない·····

だから、大学や先生には、 
ご迷惑をかけてしまった。

そんな私が
おばあさまや温斗以外に
大切にしたいと
思えた人に出会えたのに
それは、束の間の幻だった。

おばあさまが、
天音が今後どうしたいのか
天音が決めてから動きなさい。
と、温斗に言いつけたらしい。


私は·······

「結婚記念日まで待って欲しい」
と、温斗にお願いした。

今になっても
こんな事を言っている
自分を情けなく思う

無理だと言う事もわかっている
健人さんの中には·····
私は·····いない······と。

温斗も、
バカな事を·····と思っているだろう

だが、温斗は何も言わずに頷き
一度、宿泊先のホテルに戻り
私が食べれそうな物を買って
戻って来てくれた。

「ありがとう。」
と、伝えて二人で食べ
食べ終えると
私がシャワーを使うのを待ち
ベッドに入ったのを確認して
温斗は、ホテルへ戻って行った。
本当に優しんだから。

私は、おばあさまに
《ありがとうございます。
もう少しだけ、待っていて下さい。》
と、メールをすると
《身体に気をつけなさい。》
と、だけ。

二人の優しさに包まれて
やっと、少し眠る事が出来た。
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