私の愛は···幻

🎹圧巻


今日はアルの演奏を聴きに行く。

温子さんと少しだけ
おしゃれをして出掛けた。

演奏前は、アルの元へは
行かずに座席に腰掛ける。
『天音様、大丈夫ですか?』
『ありがとう、温子さん。大丈夫よ。』
と、言うと
『良かった。』
と、言ってくれた。

安定期に入っているのに
まだ、不安に支配される事が多く
アルには、直ぐにバレて
おばあさまや温子さんに話しを
されて、ずっと心配かけている。

アルは、
『不安になるのは、天音のせいではないし
天音は、何も悪くない。
でも、僕と天音の子だよ。
大丈夫、元気に僕達の元へ来てくれるから。』
と、毎日言ってくれる。

それが、どれだけ私の癒し、支えに
なっているのか、アル知らない。
本当に私の些細な不安も辛さも
直ぐに察知してくれて
取り除く配慮をしてくれる。
本当に頼もしい旦那様だ。

日本での出来事は、
全てが夢だったのではないか
と、思うくらいアルで
私の中は一杯だ。

ずっと、好きでいてくれて
ありがとう。
ずっと、待っていてくれて
ありがとう。
と、心から思っている。

あのアルフレッド・フレンデル。
ピアノの界の貴公子、または
王子と言われるほどの美形の持ち主。

身長も高くスラリとしている。
ピアノの弾く姿は、美しく優雅。

そんな人が····ずっと····と、
考えていると

割れんばかりの拍手に
ステージを見ると
アルがお客様にご挨拶をしている。

少しだけ目を動かし
私を見つけると口元を少し上げる。
それを見て、私が小さく手を振ると
今度は嬉しそうに笑うから
会場がざわつく·····と
『ああ〜っと、すみません。
今日は、私の最愛の妻が
演奏を聴きに来てくれてまして。』
と、言うから

キャーキャー
どこ?
どちら?
と、会場がどよめく

『ずっと、聴きに来てほしいと
お願いしていたのに。
僕の演奏を聴きに来ている
皆さんに悪いからと
来てくれなくて。』
と、言うと

ええっ、うそ とか
大丈夫なのに とか
等······など······


    ·······聞こえてくる

アルのファンの方々は
    本当に·····優しい。

と、思っていると
私にスポットライトがあたり

わぁー とか····
きれい とか····
愛されてる とか·····

聞こえてきて·····
   
 私は立ち上がり頭を下げる····と

  割れんばかりの拍手に

   涙がでる。

 フワァっと抱きしめられて
 『ありがとう。
   びっくりさせてごめん。
     ゆっくり座って。』
  と、アルに囁かれ
 
 頷いてから腰かける。
 会場は、拍手と歓声に包まれていた。
 ステージに戻りアルは
 皆さんにもう一度
 挨拶をして
 演奏を始めた。

 アルのピアノは、
 やはり、凄い。
 圧巻の一言
 
 家でも弾くが
 まったく違う。
 家で雑に弾いているわけではないが
 お客様の前で奏でるものは
 違って思える。

 私と温子さんは、
 アルのピアノに堪能されながら
 時間を過ごした。 

 最後まで演奏を聴いて
 会場を後にした。
 いつもの不安もなく
 心が温かく優しい気持ちで
 一杯になっていた。

 アルには
 《先に帰るね。》
 ラインしてから帰宅した。

 少し遅れてアルは帰宅した。
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