私の愛は···幻
3️⃣

🎹出会い


俺は、大学を卒業してから
父親の会社に入り
あちこちの部署を周り
勉強を繰り返す。

26歳になってから専務になり
経営に参加するようになる。

今日は、
得意先である鳴海建設社長の
岡本 正史氏からの
誘いでホテルのラウンジにきた。
「ここのピアニストが
素晴らしい女性なんだよ。」
と、岡本社長に言われて
またか?と思ってしまった。

見合いや紹介の話が多数来ていて
辟易していた。
だが···
「そうなんですね。」
当たり障りなく答えていたら
ピアノの場所にスポットライトがあたり
ピアノの横に立つ女性に目を奪われた。

スラリとした体型に映えるドレスを
身にまとい、毛先にウェブがかかる髪
綺麗な顔立ち
一度、お辞儀をしてから
椅子に腰掛ける振る舞い
全てに見せられた。

彼女の奏でるピアノは、
音色は優しく耳に心地よく響いた。

彼女が弾き終わると
沢山の拍手が鳴り響いた。
もちろん、俺も手が痛くなる程
拍手した。
「健人君も碧木さんにはまったかな?」
「碧木さんとおっしゃるのですか?
彼女自身も素晴らしいし
彼女の奏でるピアノも素晴らしいです。」
と、言うと
岡本社長は、満足気に頷いていた。

彼女は、もう一曲を弾き
立ち上がり、お辞儀をしてから
俺達のテーブルに来て
「岡本様 いらっしゃいませ。」
「天音ちゃん。
今日も素晴らしかったよ。」
「ありがとうございます。
ですが、京子先生には敵いません。」
「あはは。伝えとくよ。
あっ、こちらは、堂基建設の
堂基 健人君。
健人君、こちらは碧木 天音さん
家内の愛弟子なんだよ。」
と、言われて
「愛弟子なんて。恐れ多い。
私の尊敬する先生なんです。」
と、言いながら
「碧木 天音と申します。」
と、言われて
俺は、名刺をだし渡しながら
「堂基 健人です。
私は、ピアノの事は何も知りませんが
音が優しくて耳に心地よくて
素晴らしいと思いました。」
と、言うと
名刺を受け取りながら
「ありがとうございます。」
と、頭を下げる彼女に
「また、聴きに来ても良いですか?」
と、伝えると彼女は、少し困り顔で
「····はい。ぜひ。」
と、言った。
そんな彼女を見なかった事にして
「良かった。」
と、言うと
彼女は、可笑しそうに笑っていた。

それが、天音と俺の出会いだった。

俺 →26歳
天音→23歳
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