暴走環状線
次の上野駅で始点に戻る。
その最後尾の車両。

「相沢部長、行かないんですか?」

座席で向かい合って座る2人。

「行ってどうなる。同期にも裏切られ、惨めに生きるか?ゴメンだね」

「死にますよ」

「どうせいつかは死ぬ。それに、穏やかに死ねるなんて思ってもいない」

「意外と潔《いさぎよ》いんですね」

「一言余計だ。戸澤、お前こそ土屋とより戻してやり直せ。彼女はいい女だ」

「やはり、知っていましたか」

「公安だからな。探るのか仕事だ。さぁ、行けよ、戸澤」

「いや、腐っても上司だ。上下の規律が乱れたら、世の中みたいに警察も終わりさ」

「言うな、なかなか。部下を置いて逃げるわけにはいかない。馬鹿だな俺達は」


2人は、結局最期まで動かなかった。
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