闇に咲く華ー偽りの華ー
「あー!コーヒーがない…大樹っ、テメェ!?ぬぁに盗み食いしてんだぁあ!?」
キッチンからドスの効いた声が跳んでくる。
キッチンにいるのはひとりだけだから、声の主は…。
「こ…広ちゃん?」
「あー、またぁ?お姉ちゃん、いつもの事だから気にしないでね!」
詩月はティーン向けの雑誌を見ながら、焦る様子もなく私に言ったわ。
これがいつものこと!?
通常運転!?
「広治さん、食に関してはガメツイというか、怨みは半端ねぇんですよ。」
バイク雑誌を読みながら、仁くんは飴玉を口にする。
司さんは、大樹さんにまた盗み食いしたのかと嗜めているが、光輝さんは気にする…というよりも、眼中にない様子だ。
私以外は、何事もなかったかのように過ごしている。
慣れって凄いね…。
皆に圧倒されていると、キッチンにから広ちゃんが鬼の形相で出て来て大樹さんの胸ぐらを掴んだ。
「テメェ!!何度言わせりゃぁ気が済むんだぁ!?名前が書いてあっただろ!!」
通常運転だったからか、私に気付かず地響きのように叫ぶ。
反して、大樹さんは気怠そうにしている。