お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
「君はどうする? 部屋は濡れているんだろ」

「はい。でも、友達の家はここから遠いので難しいかなと……」

 地元までは電車で一時間ほどで、学生時代の友達も遠い。
 唯一、紗子が一番近いけれど、もうすぐ十時半になるから、この時間だとやはり迷惑だろうなと、連絡するのをためらう。

 ホテルも近くで探すのが難しいみたいだし、濡れているのを我慢して今夜は部屋で過ごすしかないかも。

「行く場所がないのか?」

「友達の家は遠いので、今日は自分の部屋で……」

「それなら、俺の部屋に来る?」

「……え?」

 涼本さんに聞き返したわたしは、目をぱちぱちとさせる。
 まさかの言葉に、思考がすぐには追いつかなかった。

「す、涼本さんの部屋に、ですか?」

「行くところがないんだろ。……ああ、男の部屋に泊まるのは抵抗があるよな」

 悪い、と謝った涼本さんにわたしは焦って首を横に振る。

「えっと、その、急に申し訳ないので」

「俺は別にいい。君が俺のところでも平気なら、構わないよ」

 ちらりとこちらを見た彼に、ドキッとした。
 涼本さんの部屋に泊まらせてもらえるなら、助かるような、だけど気になっている人の部屋に行くなんて、といろいろな感情が交ざり合っていた。

 自分の部屋が水漏れの被害にあってしまったというショックは意外と大きい。どうしたらいいのか悩んでしまう。

 部屋をそのままにして離れるのは気になる。でも、ひとりで過ごすのも不安。
 迷って返事ができないでいるわたしに、「大丈夫なら泊まって」と涼本さんは言ってくれた。
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