お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
 仕事を終えて帰宅する途中、そんなことを考えていた。
 電車を降りて改札を通り、夕飯を買うために駅前のコンビニへ向かう。

 そういえば、涼本さんは夕食どうするんだろう?
 立ち止まって鞄からスマホを取り出し、『夕食はどうしますか?』と彼にメッセージを送った。

 よければ一緒に……なんて思ったけど、まだ仕事中なのだろう。涼本さんからの返信はすぐにもらえなかった。

 なにを食べるか決めたわたしは、サラダとレトルトのミートソース、スパゲッティの束をカゴに入れてレジへ向かった。

 涼本さんが食べなかったら、明日わたしが残りを食べてもいい。
 こういうのは深く考えず、ついでに買ってきましたよという軽い感じでいいよね。

 そう思いながら会計を済ませ、エコバッグを手に下げながら涼本さんの部屋に帰った。

 朝渡された鍵を使って部屋の中に入ったわたしは、ダイニングテーブルに買ってきたものを置く。

 そのまますぐに作り出そうかと思ったけれど、涼本さんと浴室を使うタイミングがかぶらないように、先にシャワーを済ませることにした。

 シャワーを浴び終え、髪を乾かしてリビングに戻ろうとしたとき、玄関のドアが開いて涼本さんが帰ってきた。

「お、お帰りなさい!」

「ただいま」

 やりとりになんだか照れてしまって、首にかけていたタオルで口もとを隠す。

「悪い、連絡もらったのに。会社を出るときに気づいた」

「わたしの方こそ急に連絡をしてすみませんでした。あの、今から作るので、よかったら食べてください」

 靴を脱ぎ、廊下を歩いて近づいてきた涼本さんは、わたしを見たあと小さく笑って「ありがとう」と言った。

 なんとなく、涼本さんがほっとしたような表情をしているように感じた。

「……作るって言っても、茹でてレトルトのソースをかけるだけなんですけど」

「それでもうれしいよ。着替えてくる」

「はい、わかりました」

 リビングに入っていったわたしは、そのままキッチンへ向かう。
 そして、パスタを茹でる準備をした。
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