お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
絶対、深い意味はない。だから平静と言葉を返そうと思うのに、ぽうっとしたまま涼本さんを見つめて、硬直してしまう。
「妙に落ち着くんだ。不摂生だった生活も直せそうな気がする」
「そ、そうですか、よかったです」
わたしと一緒にいると、健康的になれそうでいいってことだろう。
思っていた通り、期待をしてしまうような意味はなかった。でも、彼のためになにかできたらいいなと考えていたから、健康になってくれたらうれしい。
「食事の時間はしっかり作って、仕事ばかりにならないように適度な息抜きもしてくださいね」
無理はしないでほしい、と思っての言葉だったが、余計なお世話と思われたかな。
体調不良を周りに知られたくないというくらいだから、こういうことを他人に言われるのは嫌だったかもしれない。
「すみません、部署の違う年下のわたしなんかが偉そうなことを……」
「いや、君の言う通りだ。俺も気をつけなければいけないと思っていたし」
慌てて涼本さんの様子を気にしていたら、彼はわたしに穏やかな笑みを見せてくれたので、ほっとした。
「適度な息抜きか……。そうだ、今度の休日、俺の息抜きに付き合ってほしい」
「え……?」
「どこでもいい。ふたりで出掛けよう」
わたしは目をぱちぱちしながら涼本さんを見ていた。
休日にふたりで出掛ける?
「あ、あの、どうしてわたしと……」
「仕事ばかりにならないようにと、君が言ったんだろう。だから一緒に」
ちょっと待って、なんだか強引すぎる理由のような気がする。
でも、出掛けようと言われてドキドキしているわたしは、誘われたことにうれしさを感じていた。