お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
 ちょっとだけ驚いたような表情をした彼は、すぐにふっと口もとを緩める。

「ありがとう。うれしいよ」

 優しい声でそう言われてじわりと顔が熱くなったのを感じたわたしは、思わずうつむいてしまった。

 キスをした日からなるべく普段通りにと思っているのに、やはり今まで以上に意識してしまう。

 気になってしまうのは仕方ないよね?
 キスなんて誰とでもできてしまうなんて言う人もいるし……でも、涼本さんはそんな人には見えない。

 どうしよう、はっきりと聞くべきなのかな。
 あれこれと考えているうちに少し間が空いて、キッチンにやってきた涼本さんがコーヒーを入れはじめた。

「今日からしばらく忙しくて帰りが遅くなると思う。夕飯の心配はいらないから、俺のことは気にせず先に休んでいて」

「そ、そうなんですね。わかりました」

 もう顔の赤みは大丈夫か気になってそわそわしながら返事をしたわたしは、涼本さんの方を見ることができないまま朝食の準備にとりかかった。



 キスのことはあまり気にしないようにしよう!

 そう思って、仕事などなにかやることがあれば考えることはなかったけれど、やはり集中が切れてしまうとふと考えてしまって。

「香菜? おーい、香菜?」

「……えっ!? ごめん、聞いてなかった!」

 食堂で昼食を終えて、少しの時間ゆっくりとしている間にわたしはぼうっとしていたようで、紗子が首を傾げながらわたしを見ている。
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