お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
「付き合ってはいないけど、キスしちゃった。わたしは結構頭が混乱中だけど、涼本さんは平然としていて、普段通りなの。これって、どういうことなのかなって……」

「キスしたのにどうして付き合ってないの?」

「したからって、付き合えるとは限らないでしょう……」

「それでいいの!? 涼本さんの気持ちを確認しなよ! ていうか、涼本さんも香菜になにも言わないでいるって、どういうこと?」

 紗子が眉間に皺を寄せはじめた。

「わたしも恥ずかしさとか、いろいろ頭が追いつかなくて核心に触れるタイミングを逃しちゃったんだよね……」

 涼本さんと目が合ったら逸らしてしまうようなことが多くて、自分で気まずい雰囲気を出してしまったと思う。

「それに、涼本さんの気持ちを聞くのも恐いというか……」

「でもそれだと先に進まないよ? 香菜も覚悟を決めて想いを伝えるべき!」

 説得するような紗子の口調に押されて、わたしは小さく頷いていた。

 勇気を出して自分の想いも伝えてみるべきか。
 彼のことが好きだから、どうしても期待と同じくらい不安を抱いてしまう。涼本さんのような人に、わたしなんて不釣り合いってわかっているから尚更。

 恋愛においての行動力や勢いがわたしにもっとあればいいのに。
 そんなことを思いながら小さなため息をついてしまった。



 涼本さんは朝言っていた通り、夜遅く帰宅したようだった。

 翌日、朝起きたら洗ったお弁当箱がキッチンに置いてあって、ダイニングテーブルに手書きのメモが置かれていた。

『美味しかった。ありがとう』と書いてあって頬が緩む。でも涼本さんはすでに出勤していて朝会うことができなかった。

 いつもよりもずいぶん早い。今日もお弁当を作ろうと思っていたけれど、涼本さんには渡せないな……。
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