お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
 残念に思いながら、わたしは自分のぶんのお弁当と朝食を用意した。
 そして夕方頃、涼本さんから『今日も遅くなる』というメッセージが来て、その次の日も同じように涼本さんと会うことがなかった。

 今涼本さんの担当している企画がいろいろと大変そうだというのは知っている。わたしは部署が違うから、たいした力にもなれない。
 大丈夫だろうか。遅くに帰ってきて朝は早く出勤して、ちゃんと寝ているのかな?

 わたしがこの部屋に住まわせてもらう前に、体調を崩しやすいなんてことを話していたから心配だ。

 今日は涼本さんのぶんもお弁当を作って、彼のもとに届けてみよう。そのとき様子を見られたらいいかも!

 朝はそんなことを思ってお弁当を作って会社に持ってきたけれど、よく考えたら数本さんに会社でお弁当を渡すって……その場面を周りの人に見られたらどうして?と、疑問を持たれてしまうよね。

 でも持ってきちゃったし……。
 なんとかこっそり、渡せないかな。

 そう思ったわたしはお昼休み、涼本さんに『今からお弁当を持っていきます!』とメッセージを送って、彼のいる商品企画部へ向かった。

 部署を覗いてみたけれど、涼本さんの姿は見えない。
 もしかして、もうお昼を食べに出てしまったかな? それとも会議とか……。

 先ほど送ったメッセージの返信は来ていない。
 他部署の人間があまりウロウロしていると変に思われるし、とりあえず戻ったほうがいいかも。

 そう思って踵を返したとき、通路を歩いてきていた男性と目が合った。

「総務? なんか用か?」

「あっ、いいえ、なんでもないんです」

 ドキリとしたわたしは、片手を大きく振りながら大げさなリアクションをとってしまう。

 声をかけてきた男性はたしか、神坂 晴久《かみざか はるひさ》さんだ。
 背が高くてクセのついた栗色のセンター分けの髪と、ぱっちりとした二重の目で整った顔立ちをしている。歳は涼本さんと同じくらいだろうか。
< 65 / 110 >

この作品をシェア

pagetop