お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
 気だるそうな雰囲気が妙に色っぽくて、そわそわしてくる。キスしたことも思い出してしまい目を合わせていられなくなって、わたしはうつむいてしまったけど話は続けた。

「ひとりで仕事を背負い込むようなことをしていませんか? 同じ部署の人に頼んで一緒にやったほうが効率がいいし、他の仕事にも着手できるし……」

「……俺の仕事に口出ししたいの?」

 冷たい声が響いて、はっとしたわたしは顔を上げた。
 涼本さんはもうわたしの方を見ていない。

「そ、そんなつもりでは……」

「俺のことは気にしないでくれ」

「すみません……」

 放っておいてほしいというのが強く伝わってきて気まずさを感じたわたしは、小さく頭を下げて出入口のドアに向かった。

 わたし、余計なことを言っちゃったよね。
 部署も違う、しかも新人のわたしなんかが涼本さんの仕事についてとやかく言う筋合いはないってわかっているのに。

 効率がいいとか、涼本さんなら当たり前に考えていることだろう。彼がやらなくてはいけない事情があるから、無理をしているのだと思う。

 でも……彼が心配だった。
 疲れているような顔をしていた涼本さんに少しでも休んでほしいと、気遣ったつもりだったのに。

 冷たくて厳しい人って噂があったけど、わたしに接してくれていた彼はそんなふうには感じなかった。

 それなのに、先ほどの涼本さんは冷たく感じた。
 キスしたり急に冷たくなったり、わたしはどこまで彼に近づいていいのだろう。

 第二会議室を後にして歩き出しながらも、浮かんでくるのは涼本さんの顔。
 どうしても心配で、また余計なお世話だと言われてしまうかもしれないけれど。なにか彼のためにできることはないか、考えてしまう。

 しつこいって言われて、嫌われるかな。それでもやっぱり、放っておくことなんてできないよ……。

 悩みながら階段を下りていると、休憩ルームの方へ向かう神坂さんの姿が視界に入る。関わりたくないって思ったけど、こうなったら仕方がない!

「神坂さん!」

 わたしは通路へと急ぎながら彼に声をかけた。
 神坂さんは振り向いてわたしに気づくと、立ち止まった彼はからかうように小さく首をかしげた。
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