お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
 そんなことを考えていたけれど、今涼本さんとふたりきりということを意識しはじめて、急に落ち着かない気分になってくる。

「す、すみません……えっと、そろそろ帰りますか」

 涼本さんの前で神坂さんにお節介って言われてしまったのを思い出し、気まずさが沸きあがってきて慌てて動こうとするわたしの手を涼本さんが掴んだ。

「君が来る前に神坂から全部聞いていた。悪かった……君に余計な心配をかけて、態度も変で……」

 そう言った涼本さんは困ったような表情をしていた。

「君とどう接していいのか迷っていた。ちょうど仕事も手が離せない状態で、少し距離をとったほうがお互いのためかと」

「それはどうして……」

「俺が君にキスしたから。あれから君は俺と目が合うと、うつむいてしまうことが多くなっただろ」

 わたしを真っ直ぐ見つめながらそう言った涼本さんに、胸の音が跳ねる。

 キスをしたことを思い出して恥ずかしくなってしまうと、涼本さんを見ていられなくてうつむいてしまうことがあった。
 そのことに彼は気づいていたんだ。

「君が戸惑っているように感じたんだ。俺が急にキスをしたのが悪いから……目を逸らされなくなるまで遠ざけた方がいいのかなって。そうしないと俺はもっと余計なことをしそうだったから」

「た、たしかに戸惑いました。どうしてだろうって。でも、嫌だったとかではなくて……思い出すと恥ずかしいから涼本さんを見ていられなくて……」

 こんなことを言ったら、わたしが涼本さんに特別な気持ちがあるって知られてしまうかも。でも、胸の奥がそわそわして黙っていることができなかった。
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