お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
「俺は、君が可愛くてキスした」

 え……?
 見つめている彼の真剣な表情に頬が熱くなる。

 待って、特別な意味があるとかではないはず。だって涼本さんは……。

「君のことがずっと気になっているんだ」

「そ、それは、わたしの香水の匂いが涼本さんの特別な女性と一緒だから……」

「……特別な女性?」

「わたしと昔会ったことがあると思うって言っていましたけど、それはたぶんわたしと同じ香水をつけた別の女性で、香りが気になるっていうのは、その人が特別だったから思い出に残っているとかではないんですか?」

 最初に引っかかっていたこと。恐る恐る聞いてみたのに、涼本さんは首をかしげて『なんのことだ?』というような顔をしている。

 涼本さんが言っていたわけではないけれど、香りが気になるというようなこと話していたから、忘れられない人と同じ香りなのかなと思ったわけで……。
 わたしの勝手な早とちりだった?

「たしかに、思い出に残っていることではあるよ。あのときの〝女の子〟のこと」

「え……?」

 あのときの女の子?
 懐かしむような微笑みを浮かべている涼本さんに、さらに尋ねようとしたとき、休憩スペースに他の社員がやってきて、わたしは慌てて掴まれたままだった手を引っ込めた。

「……続きの話は家でしないか?」

「は、はい。そうします」

 そうだった、ここは会社だ。
 いろいろ話していたことを思い出して急に恥ずかしくなりながらも、わたしは涼本さんと一緒に休憩スペースを出た。
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