お昼寝御曹司とふたりだけの秘密



 もっと余裕があって、なんでも前向きに考えられる人間にならないと!
 昼食を終えて紗子と別れたわたしは、そんなことを思いながら通路を歩いていた。

 マイナス思考にはなりたくない。
 だから先ほどの紗子の話にも平気って言った……けど! やはりどこか気にしてしまう自分がいる。

 ……こんなとき、司さんに会ったら少し安心できるかもしれない。
 そう考えていたら自然と第一会議室へと足が向いていた。

 この場所は他の商品企画部の人は出入りしないから司さんは気が休まるのだろう。

 休憩中に申し訳ないと思いつつ、わたしは会議室のドアを開けた。
 椅子がくっついて並べられていて、そこに人が寝ている光景はもう何度か見ている。

 彼がそこに寝ていることになぜかほっとしたわたしは、ゆっくりと近づいた。
 まだ、他の人にもここで休んでいることを言っていないのかな?

 口もとが緩みそうになるのを堪えながら、司さんの顔を覗くように見る。
 今日の朝も見たけれど、いつ見ても整ったその顔立ちに胸が高鳴ってしまう。お疲れさまです、なんて心の中で呟きながら見つめていたら、彼の眉間に皺が寄って「ん……」と軽く唸った。

 そしてうっすらと、目が開いていく。

「……香菜?」

「はい。お疲れさまです」

「……幻覚かと思った」

「あはは、なに言ってるんですか!」

 瞬きをしながらゆっくりと体を起こした司さんが、腕を伸ばしてわたしの頬に触れてくる。
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