お昼寝御曹司とふたりだけの秘密
 ずっと気になっていること。
 司さんから話してくれないのなら、わたしが聞いて確かめないと、このままもやもやした状態が続く。心配されて誤魔化すのも苦しいから、ちゃんと話そう。

「……実は、司さんがお見合いをするという話を聞いてしまって」

 司さんがはっとしたような動きをしたように見えて、緊張してくる。

「……社長から紹介されたんですか? お見合いの話は本当ですか?」

 視線を落として話していたわたしは、緊張から掌をぎゅっと握った。

「見合いの話か……。たしかに、そういう話はあったよ。でも断ってる。食事の予定もない」

 司さんの言葉に、わたしはほっとして深く息を吐き出した。すると彼がわたしの顔を覗くように見る。

「もしかして、不安にさせていた?」

「あ……すみません、勝手にいろいろ気にしてしまって……噂くらい平静としていたかったんですけど」

 謝るわたしに、司さんは申し訳ないという表情になった。

「俺の方こそすまない。俺の父親が勝手にセッティングしようとしていただけなんだ。すぐに断ったけど、君に詳しく話をするのは結婚を意識させてしまうかと思って、俺からはなにも言わなかった。君はまだ入社したばかりで、仕事もプライベートもやりたいことはたくさんあるだろうから、結婚なんて考えもしないだろう」

 そう言って司さんは小さく笑った。

 結婚……。そうか、お見合いは結婚を前提に考えてするものだよね。

 たしかにわたしはまだ会社に入社したばかりの新人だし、結婚して新しい家族ができるなんてこと、考えるのは早いのかもしれない。

 でも、司さんと一緒になることを考えないわけじゃない。
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