君だけに捧ぐアンコール
 6月最後の日曜日。今日は加賀宮さんの単独ソロコンサートの日だ。
上手くいけば全国ツアーになるそうで、いろいろマスコミも押し寄せている。

 あれからKEIとして、加賀宮百合子の孫であることを認め、その上で孫としてではなく自分自身の音を聴いてもらえるよう精進していくとコメントを発表。
その姿勢も含め、これまでの演奏がSNSで話題となり、一躍時の人となった。

『ねぇ花音ちゃん、ちゃんと隆文さんのこと見張ってくれてた?』

あともう少しで開演だというのに、真知子ちゃんから電話だ。

「私が見る限り、隆文さんは真知子ちゃん一筋だよ」

『そんなことわかってるわよ!でも若い子が!』

「はいはいそんなのに揺らぐような安い男じゃないでしょ。」

『花音ちゃん!なんか大人になってない?ちょっと』

真知子ちゃんにはいっぱい心配かけたからね。少しは大人になったことも示さないと。

「ふふっ。これからKEIのコンサートなの。じゃあね」

『帰国したら問いただすからね!』

明るい真知子ちゃんの声に私も笑顔になる。
そして、客席へと足を運んだ。


彼が舞台の上を歩く音が会場に響く。
そして、彼が鍵盤の上に手を置いた瞬間から、この会場いる全ての人が息を潜めた。

彼の魔法がはじまる。

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