愛しの鳥籠〜完結篇〜

「ユ、ユキ…?」

恐る恐るユキの名を呼び、そろりと彼の頬に右手を添えると、ビクリッとまるで金縛りからたった今解けたかのように身体を揺らした。

「あ…」

「ユキ?大丈夫?」

わたしを凝視しているようで焦点が合っていない彼の眼が揺れに揺れていて、いよいよ本気で心配になる。

「…大丈夫。ランがあまりにも綺麗で色っぽいから正気失いかけただけ」

「…は?」

この人はいったい何を言っているのだろうか。わたしの事なんて普段から見飽きるほど見ているというのに。

「こんな綺麗な女性が僕の花嫁なんて信じられない。これは夢なのか?それとも新婚マジック…?」

なんだそのマジックは。わたしは先程のものよりも更に大きな溜め息を吐くと、
「ポーン」とルームサービスが届いた事を知らせるベルが鳴った。

「いいから早く服を着てっ!!」

わたしの叫びがこのエグゼクティブスイートの部屋全体に響き、微かにこだましたのだった。


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