愛しの鳥籠〜完結篇〜
ーーそう。わたし達は昨日ふたりで婚姻届を役所に提出し、晴れて「夫婦」となり、その足で国内有数の一流ホテルのエグゼクティブスイートに泊まったのだった。
本来ならば北欧で挙げる予定でいた式だが、このご時世だ。海外に行くこと自体叶わない。
ユキは過去や自分の思考を話したがらないけど、時々「昔から北欧神話が好きなんだ」と、入眠寸前のまどろみのなか、どこかうっとりとした口調で話してくれるのだ。
「ゲームや小説とかによく引用される『オーディン』とか『ヴァルキリー』は北欧神話の神族の名前と同じだったりするんだよ。それらを参考にしたかはわからないけどね」
そういう類のゲームや本を手に取る事すらしないわたしには解らない世界の話だけど、それを楽しそうに語るユキの瞳を見つめるのが好きだった。