身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


「先生の縁談だ、婚約者だって話いろいろ耳に入ってきますけど、未だに結婚されないってことは、もしかしたらアイツにも望みはあったってことですか?」


 望みも何も、俺は今だって……。


「もし、先生が今もアイツを想っているなら、会いに行ったらいいと思います。でも、すべて受け入れることができるっていう覚悟があるならですけど」


 さっきから意味深な言い回しをしてくる笹原は、俺の知らない彼女の事情を知っているのだと察しがついた。

 この場でそれ以上問い詰めることは不毛だとぐっと抑え、「わかった」と答える。


「休憩中に悪かったな」


 このまま病院を飛び出して彼女の元へ向かいたい気持ちを押し込め、カンファレンスルームへと足を向けた。


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