追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 今、目の前にいるディオからは前向きな意志が感じられる。最初、居住区改革を提案した時より協力的で、なんとかしようという熱意が伝わった。

「ああ、サーシャが寝てしまったな」

 ディオが視線を送った先には、遊び疲れたサーシャが守護獣たちに囲まれて眠ってしまっている。

「テントの中に運んだ方がいいですね。山の夜は冷えますから」

「うん。名残惜しいが、そろそろお開きにしよう。久しぶりに楽しい一日が過ごせたよ。ありがとう、ララ」

「いえそんな。こちらこそ素敵な一日でした。大勢と食事するのなんて初めてで……あ、ディオ、そんな顔しないで下さい!」

 話の途中でディオの顔が曇ったのを、私は見逃さなかった。きっと、閉じ込められていたという話を思い出したのだ。

「ごめん。わかってはいるんだが、どうしても……」

「もう過去のことですから。私、全てを忘れて楽しく生きたいと思っているんです」

「全てを忘れて、楽しく、か。そう出来たらいいな」

 ディオは星空を見上げた。
 その横顔に、憂いが見えたのは気のせいか。
 昨日より少し欠けた月が照らす彼の瞳は、遠いなにかに囚われているように、哀しげに揺れていた。

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