追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
「わたしが乗る! どいてくれ!」

「大丈夫ですか? 後ろを持っていましょうか?」

「必要ない! 見ていたからわかる」

 と、言われても、国の重要人物に怪我はさせられない。
 とりあえず、フェイロンの自尊心を傷つけないように、そっと後ろで支えていよう。
 そう考えると、自転車を降りてブレーキの説明をし、さっと背後に移動した。
 よろめいたりしたらすぐに手を貸そう、と思っていたのに、なんとフェイロンは、サドルに乗って、ハンドルを握ると、なんの迷いもなくペダルを踏み、事も無げに走り出したのだ。

「おおっ! 風が気持ちいいー! 最高だぜー」

 広い中庭を、フェイロンの自転車が疾走する。
 急なカーブもなんのその、絶妙にブレーキを駆使して、転げることなく見事に操縦して見せた。
 初心者でも簡単に乗りこなす人はいる。これは運動神経とかではなく、バランス感覚と思い切りのよさ、あとはセンスの問題だと私は考えている。フェイロンはこの全てを持っていたのかもしれない。
 楽しそうに五周ほどしたあと、漸くフェイロンは、私たちの前に戻って来た。
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