追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 ただ、その力が必要となる未来は全く見えなかった。

「ありがたいのですが、そんな大層な力、私には……」

「深く考えなくてもいいと思うよ。困ったら助けてくれる、程度に考えていたら?」

 ディオがすっと私の横に来て言った。

「困ったら助けてくれる?」

「うん。なあ、フェイロン」

「まあ、そうだな。ちょっと怖がらせ過ぎたか、悪い悪い」

 ちっとも悪いと思ってなさそうに、フェイロンは笑った。

「あ、言っておくが、わたしが助けるのはララだからな。お前じゃなくて」

「わかっている。ありがとう」

「うっ、いきなり素直になりやがって。くそ、調子狂うわ」

 フェイロンは、わしゃわしゃと頭を掻いた。星見の塔の管理者の照れた姿に一瞬場が和む。
 当代一の権力者で、ワーカホリック。
 運動嫌いで珍しいもの好きのフェイロンは、一風変わっているけれど、話しやすい好青年だった。厄介なところはあるけれど、私の創造物を素直に受け入れてくれたので好感度は大である。
 尚も中庭で自転車を爆走させるフェイロンと、心配そうに見守るアルメイダを置いて、私たちは星見の塔をあとにした。
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