追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 だいたい予想通りだった。そもそも井戸しかない状態なのに、各家庭にお風呂があるわけない。井戸から汲んで家の中で湯を沸かして浸かるなんて、相当暇な人にしか許されない行為だ。

「困りましたねえ。やっぱり温泉の出そうなところを探してみますか」

「おんせんって、なに?」

「地面から湧き出る温水のことです。体によい効能のお湯もあるみたいですよ」

「湧き出る温水?」

 マイアは恐ろしく食い付いた。
 体を前のめりにし顔を近づけて、私と額が触れるくらいの距離まで来て、話を聞こうとしている。その鬼気迫る様子に一瞬腰が引けた。

「それ、探したらあるの? この辺りにあるの? ねえ、どうなの?」

「い、いや、あの……絶対というわけではないのですが……探してみる価値はあるかと?」

「そう。それは、探さなくてはいけないわ。ええ、早急に」

 マイアの目は据わっている。もしかしたら、彼女は相当なお風呂好きなのでは? さっきの言葉も、湯あみが出来なくて、嫌でたまらないといった様子だったもの。

「あの……じゃあ、明日にでも探しに行きましょうか。掘っても出ないかもしれませんけど……」
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