追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 お金なんてもらっても使い道がない。宝石なら使えるけど、森の中で木こりをしている親子に金品を要求するのも気が引ける。
 そんなものより、食べ物である。筋力向上のために、良質なタンパク質とビタミンが欲しい。万能で便利な創造魔法の欠点は食べ物が創れないことなのだ。

「は、はい! それならなんとか。今持ってきます!」

 ハイネは元気よく駆け出すと、数分後、父親とともにやって来た。ふたりは、大きな袋を抱えている。

「商人さん、お待たせっ!」

「新しい斧、どうもありがとうございます! これで仕事が出来ます。ご所望の森の果実や干した肉は、この袋に詰めておきました。さあ、どうぞ!」

「ありがとう。助かります」

 ずっしりと重い食料を受け取ると、父親が不思議そうに言った。

「でも、森の中に商人さんがいるなんて珍しいですね」

「あ、ええ。ちょっと野暮用で……」

 確かに、商人は人の多いところにいるものだ。森の中じゃ商売にならないものね。

「そうですか。あっ、ひとつ忠告しておきますが、ここから向こうの森へ行くなら気を付けて下さいね」

「向こうの森?」

 父親は川の下流域の鬱蒼とした森を指さした。
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