因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「私よりずっと長く一緒にいる伊織さんでも?」
「ええ。パーティーがよほど嬉しかったんでしょうね。和華さんが来てから先生は色々な表情を見せてくれるようになったので、一気に親しみが湧いてます。……なんて、俺が言ってたことご本人には内緒で」
人差し指を口もとに立て、悪戯っぽく笑った伊織さん。光圀さんに聞かれていたら、後で叱られてしまうのかもしれない。
「ふふっ。了解です」
「じゃあ和華さん、申し訳ありませんが部屋まで手を貸してください」
「もちろんです。光圀さん、お部屋に帰りますよー」
光圀さんは目を閉じているので聞こえているかわからないが、その後も段差などでは必ず声をかけ、伊織さんと協力して彼を部屋まで運んだ。
布団を敷いて光圀さんを寝かせた後、伊織さんはひとりで食堂へ戻っていった。
『今戻るとうるさいでしょうから』と、家政婦たちの目を配慮してくれたのだ。
その間にお風呂を済ませ、部屋に戻る前に食堂を覗く。
そこにはすでに誰もおらず、料理の空容器はゴミ袋に、グラスや取り皿はすべてシンクに運んであった。