因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました

 季節は流れ、夏がやってきた。

 今夜は七夕。中国では七夕の夜に芸事の上達を願う風習があり、醍醐家でもそれにならい、醍醐流香道のますますの発展を願って七夕をお祝いするんだとか。

 とはいえ、そのお祝いの仕方は私もよく知る日本流。願い事を書いた短冊や折り紙で作った吹き流しを笹につけ、食堂の軒下に飾る。

 夕食のメニューは、この日のために奈良から取り寄せた七色の素麺。光圀さんも幼い頃から大好物だそうだ。

 まだ明るい夕方、私も微力ながら笹の飾り付けを手伝っていると、みんなの書いた短冊が目に入る。

 光圀さんはまたしても【家内安全】。毛筆で書かれた文字は相変わらず達筆だ。

 伊織さんは【世界平和】。争いごとを好まない彼らしいし、私も同感だ。

 太助くんは……【醍醐先生のような香道家になる】。思わずうれしくなって、頬が緩んだ。

 その他、家政婦さん達も【お給料アップ】や、【先生が芸能人を家に連れてきますように】など、なかなか自由に願い事を書いている。

 私自身も願い事はあるけれど、内容は初詣の時と同じ。

 醍醐家のみんなに見られてしまうのは気まずい内容だけれど、他の願いも思い浮かばず困っているところだ。

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