因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「寝ているのか?」
そうだと思ってもらうために、襖に背を向け息を殺して彼が去るのを待つ。
けれど、光圀さんは簡単に立ち去ってはくれなかった。
「入るぞ」
予告された直後、襖が開いた。
ビクッと肩が跳ねてしまったが、目を閉じて寝たふりを続ける。
室内に入ってきた彼が、私の背後に腰を下ろす気配と衣擦れの音がした。嗅ぎ慣れた白檀が彼の着物からふわりと香って、胸が締め付けられる。
少しして、彼の手のひらが私のおでこに触れた。
「熱はなさそうだな」
静かに呟いた後、光圀さんの手は額から離れていく。
これで、寝ているだけだとわかってくれたかな。気を抜いて、そう思った時だった。
「和華。狸寝入りはやめないか?」
ドクン、と心臓が重い音を立てた。
思わず瞼を開き、おそるおそる彼の方へ寝返りを打つ。
「光圀さん、どうして……」
「きみは前にも寝たふりをしたことがあっただろう。あの時は騙されたが、今はそうはいかない。俺がどれだけきみを見ていると思っている」
「ごめんなさい、あの」
「なにか悩んでいるんだろう? でも、俺には言いたくない」
まるで心を覗いたかのように言い当てられ、私は瞠目する。