因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「言いたくないのならきみが言いたくなるまで待つと思っていたが、こうしてふさぎ込んでしまうまでの悩みなら、打ち明けて楽になってほしい。どんな内容でも受け止めるから」
どんな内容でも受け止める。そう言ってくれるのはありがたいけれど、先祖代々伝わる家訓を光圀さんひとりではどうにもできないだろう。
打ち明けたところで、事実は動かない。やっぱり、光圀さんには話せないよ。
「……まぁ、そんな簡単な悩みならとっくに話しているよな。それなら気分転換だ。和華、香間へ行こう」
口を噤んだままの私を責めるでもなく、光圀さんは明るい調子で言って立ち上がる。
「香間へ……?」
「ああ。香間できみとふたりきりになるのはあの日以来だが、今度は信用してほしい。きみの心にかかる霧を晴らすために、聞香が役に立つはずだ。……おいで」
優しく促され、差し伸べられた手に自分の手を重ねる。
光圀さんはしっかり私の手を引いて、廊下へと連れ出した。
母屋を出て庭を通ると、西の空に一番星が輝いているのが見えた。
こんなに晴れた空なら、織姫と彦星も会えそう――。
そう思ったら、ほんの少しだけ心が和んだ。