因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
気のない返事をする太助くんから、楓子さんが目を逸らす。と同時に、離れの前にいる私と伊織さんに気づき、笑顔を作って歩み寄ってきた。
ああ、今度はどんな嫌味が待っていることやら……。
「ごめんなさいね、和華さん。今、みんな持ち場を掃除しているところで、一カ所に集まっていないの。朝食の時ならよかったんだけど、タイミングが悪かったわねぇ。あの時、まだ和華さんはお布団にいらしたでしょう? 廊下までいびきも聞こえていたくらい、熟睡されていたものね」
しつこい。寝坊の件をまだネチネチと言うか。いびきの件も本当かどうか怪しい。
というか、早く着替えてここに来いと言ったのは楓子さんなのに、来てみたら〝みんな持ち場を掃除中〟って……わかっていてこの時間を指定したんだろうな。嫌がらせが低俗すぎる。
伊織さんも同じことを思っているのか、私と目を合わせて引きつった笑いを浮かべる。
とりあえず彼は味方らしいとわかり、ホッとした。
「それなら、私が皆さんのところに出向いてご挨拶させていただきます。この家、広いのでまだ何がどこにあるのかも把握していませんし」
「それがいいですね。では、僕が案内しますよ」
楓子さんになにか言われる前に、伊織さんが私の背を押してその場を離れてくれる。
楓子さんは冷たい流し目で、私たちを見送っていた。